本記事では、高難易度資格に位置付けられる日商簿記1級を独学で合格する方法について記載します。
筆者は実際に、正社員でフルタイムで仕事をしながら日商簿記1級に独学で合格しました。その時の実体験をもとに、合格に役立つための情報をお届けいたします。
(その後、専門学校の通信教育で公認会計士二次試験に合格しております。その時の記事もよければご参照ください。)↓↓↓
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なぜ日商簿記1級は難しいのか?
日商簿記は一般的に高難易度資格として位置づけられています。実際に合格率を見ても毎年10%程度です。では具体的にどこがどう難しいのでしょうか?その主な理由は以下の4点になります。
①単純に出題範囲が広い
日商簿記2級と比較すると単純に出題範囲が広いです。おおよそ10倍くらいの範囲だです。出題範囲が広いので当然新たに学ぶべきことも多いので難しくなります。
②解答にスピードが求められる
単純に問題が解けるようになればいいかというとそうではなく、解答に計算スピードが求められます。そのためには、決められた時間内で効率的かつ正確に問題を解く訓練が必要となります。
③理論系の問題が出題される
日商簿記2級では計算問題が中心だったと思いますが、1級ではなぜそのような仕訳を行うのか?という理論的な背景を問われます。その為には、膨大な会計基準を読み込んで理解しておく必要があります。
④会計士や税理士の受験生が受験する
見落とされがちですが、実はこれが難易度を上げる一番の原因になっているのではないかと筆者は考えております。
実は、簿記1級の単独合格を目指す人は意外と少なく、多くの受験生は会計士や税理士資格を取る過程で受験します。簿記1級は十分に難しい資格なのですが、会計士受験生からするとそれほど難しくはありません。
そのため合格水準が高くなるという側面があります。簿記1級は相対評価で、合格率を10%に保つために配点を調整します。そのため他受験生のレベルが高ければそれだけ難易度が上がります。
勉強方法について
基本的には以下のステップで勉強すればよいかと思います。
①市販のテキストと問題集をもとに勉強する(商業簿記/工業簿記/原価計算)
まずは基本が大事で個々の論点を解けるようになる必要がありますので、市販のテキストと問題集で勉強します。(個人的には大原のテキストと問題集がお薦めです。)
コツは問題集を利用したアウトプット中心の勉強を行う事です。問題集が完璧に回答できるようになるまで繰り返し勉強します。
②企業会計原則や各種会計基準を読み込む(会計学)
会計学の理論的な問題を解くためには、企業会計原則や会計基準を読み込むことが必須です。かなり難解でボリュームもあり、とにかく時間がかかりますので、毎日コツコツ読み込むことをお薦めします。
ただし暗記までは必要なく、あくまで論理を理解して自分の中で腹落ちさせることが大事です。
もし、最初から原文の会計基準を読み込むのに抵抗があるようでしたら、市販の会計学専用のテキストを利用したり、ネットで調べたりも良いかと思いますが、最終的には原文を読み込んでおくことがお薦めです。
会計基準は以下のホームページにあります。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards.html
③過去問で解答スピードを上げる練習をする
本試験の商業簿記に関しては、決算整理仕訳を行い財務諸表を完成させる総合的な問題が問われます。市販の問題集で個々の論点が解けるようになっても、総合的な問題には太刀打ちできません。なぜなら解答時間が足りないからです。
そのため繰り返し過去問を解いてスピードを上げる練習をしておく必要があります。
細かいですが解答スピードを上げるためには、電卓も重要です。良い電卓を用意する(筆者はCASIO製 ND-26Sを利用)、ブラインドタッチ、左手入力などにも習熟する必要があります。
④最後の仕上げに、公認会計士の会計学の総合問題を解く
これが独学で合格するための最重要ポイントになります。
簿記1級のテキストと問題集だけで勉強していると、会計士の会計学を勉強している人と微妙に差が出てしまいます。(簿記1級が難しい理由にも書きましたが)簿記1級は相対評価なので、会計士受験生と差が開くとそれだけ合格するのが難しくなりますので、仕上げとしてその差を埋めておく必要があります。
そのために会計士の問題集を解解きます。市販の会計士用の問題集で問題ありません。
ただしこの勉強は最後の仕上げで2カ月程度で行えば大丈夫です。③までしっかりと勉強しておくとそこまで大きな差はありませんので。感覚的には残り5%の差を縮めていくイメージです。
合格までのスケジュール
最低でも1年はかかります。その間、2回は受験できると思いますので、1回目は雰囲気に慣れるイメージで、2回目で合格を目指すのが良いと考えます。
合格までの勉強時間と勉強時間の捻出方法
最低でも毎日3時間くらいは必要だと考えます。内訳は
- 商業簿記の問題集を解く:1時間
- 会計学に関する会計基準などの読み込み:1時間
- 工業簿記・原価計算に関する問題集を解く:1時間
仕事をしながら勉強時間を捻出する方法は、筆者のケースを参考までに記載します。
- 出勤前の1時間。出勤の時間帯にもよりますが、早起きすれば時間の確保は可能かと思われます。
- (電車通勤でしたら)出勤時と帰宅時の移動時間。私は電車の中で往復1時間勉強しておりました。電卓は叩けないので理論系を中心に勉強します。
- 昼休みの1時間。昼休みに勉強していたら周りの目が気になるかもしれませんが、そこは気にせず。周りの環境に左右されては合格は難しいです。
- 帰宅後の1~2時間。仕事の忙しさにもよりますが、確保は可能かと思われます。
- 土日など休日に3時間。過去問など時間のかかる問題を解くときは休日がお薦めです。
また、記憶を定着させる意味でも、休日にまとめて勉強するよりは、毎日コツコツと復習のタイミングを意識しながら勉強していく方がお薦めです。
筆者の場合は、1日後/3日後/1週間後で、復習するタイミングを管理しながら勉強していました。一度、記憶に定着するとテスト直前に軽く復習するだけで簡単に思い出るようになります。
最後に、記憶の定着化や理解促進には睡眠が欠かせません。しっかりと睡眠はとった方がよいです。その日はよくわからなかった問題も、翌日にすんなりと理解できるということはよくあります。(これは勉強だけでなく仕事においてもよく活用しています。)