昨今、IT業界においてもワークライフバランスをうたった企業(SIer)がたくさん出てきております。残業が平均20時間以内など、」残業時間が少ないことをアピールしてホワイトなアピールをするSIerがたくさんあります。
筆者はこの風潮に反対です。この記事ではその理由を記載します。
- ITエンジニアの対価は成果であり労働時間ではない
- ITエンジニアを勤務時間から解放すべき
- 勤務時間で拘束したがるのはマネジメント不備が要因
- ワークライフバランスはマネジメント不備の会社からITエンジニアを守るために必要?損失をクライアントに転嫁しているだけではないか。
ITエンジニアの対価は成果であり労働時間ではない
筆者が反対する理由は大きく2つあります。
1つ目は、ITエンジニアの仕事の対価は、働いた時間ではなく、成果に対してのものだという事です。
たとえば、1つのプログラムを作るのに10万円だとすると、そのプログラムを作るのに要した時間が1時間であろうと、10時間であろうとその対価は10万円です。
仮に上記の例で、時間で対価を支払うとすると、1時間当たり1万円とした場合、1時間で作った人が1万円の対価、10時間で作った人が10万円の対価となり、同じ成果物に対して生産性が高いほど損をするという矛盾が生じます。
2つ目は、ITエンジニアの個々の生産性の差が大きいということです。筆者の感覚では、0倍~10倍くらいの差があります。
たとえば1本のプログラムを作るのに、1時間で簡単に作れる人もいれば、10時間かかる人も居ます。
中には10時間かけても作れない、もしくは作れたとしてもバグだらけという人もいたりします。(こういう人は成果を出せていないので、生産性は0倍と表現しています)
上記2つの事から言えるのは、この仕事は時間に対して給料を支給する形式とは相いれないということです。
なぜなら生産性が高い人と低い人が同じ成果物を作成したと仮定した場合、生産性が低い人(10時間かかる人)は、残業代が貰えます。
ですが生産性の高い人(1時間でできる人)は残業代がもらえません。むしろ何もしていない時間も多いので、周りから見たらサボっていると思われたりもします。
その結果、ITエンジニアのスキルが適正に収入に反映されない形となってしまいます。
これは流石におかしな話ではないでしょうか。
ITエンジニアを勤務時間から解放すべき
ですので筆者の見解としては、ワークライフバランス云々ではなくて、会社の決められた労働時間(たとえば9時~18時みたいな)からITエンジニアを解放すべきです。
成果さえ出せば、働く時間帯も働く長さも自由にすべきだと考えております。もっといえば完全リモートワークにして、働く場所からも解放すべきです。
たとえば、早朝に仕事をしたい人は、早起きして午前中に仕事を終わらせられるようにすべきです。
午前中に仕事が終わって午後はやることがないけど、勤務時間終了の18時までとりあえずパソコンの前にいないといけないとか、本当に無意味で非効率な話だと思います。
一応補足ですが、ITエンジニアにおいても9時から18時など決められた時間にパソコンの前にいることに意味がある仕事もあります。
たとえばシステム運用保守などの仕事です。これらの仕事はユーザの勤務時間と合わせて、いつでも対応できるように待機しておくことも仕事の一つです。
筆者がこの記事で言っているITエンジニアの仕事は、システム構築などのプロジェクト(成果物とそれに対するタスクとスケジュールが明確化されている)を想定しています。
勤務時間で拘束したがるのはマネジメント不備が要因
ではなぜITエンジニアを時間から解放できないのか、勤務時間で拘束したがるのか、その理由はプロジェクトマネジメントの不備にあります。
マネジメントする側に計画策定能力が不足している事と、プロジェクトマネージャの個人的な感情に起因しています。
マネジメントの計画策定がずさん
計画策定能力の不足については、(ざっくりというと)成果物を作成するための漏れのないタスクの洗い出しと、ITエンジニアが作業できる粒度へのタスク分解の2つの能力が必要です。
特に前者のタスクの洗い出しは色んな意味で非常に重要なはずなのですが、なぜかこれが適当なプロジェクトマネジメントをよく見かけます。
その結果、次から次へと当初の計画外のタスクが発生し、計画外のタスクに対応するためにITエンジニアを労働時間で拘束する必要が出てくるのです。
計画外だろうがなんだろうが勤務時間は会社のために働けと強く言えるからです。
余談ですが日本でフリーランスより正社員が優遇されるのも同じ理由です。
フリーランスの場合、計画外の作業が発生した場合対応してくれない可能性が高く、正社員であれば勤務時間内は会社の業務命令は絶対だからです。
プロジェクトマネージャの不安な感情
プロジェクトマネージャというのは孤独で不安です。不安になる理由は色々ありますが、不安を起因としてITエンジニアを拘束したがります。不安を感じる主な理由は以下です。
- タスクが予定通りに終わらないのではないか
- ITエンジニアがさぼっているのではないか
- プロジェクトマネージャが暇でやることないので不安
- 管理している気がしない。自分の承認欲求を満たしたい
1つ目のタスクが予定通りに終わらないことに対して不安を抱くというのは、真っ当な事だと思います。責任感を持っていれば当然の感情です。
ですがこれについては、日次とか週次で、1時間ほどのITエンジニアとの進捗確認会を設定すればいいだけの話です。勤務時間で一日中拘束する理由にはなりません。
2つ目のITエンジニアがさぼっているのではないか?という不安は、そもそも別にさぼってもいいじゃないですか。というのが筆者の考えです。ITエンジニアが成果を出してくれれば、本来的には働き方などどうでもいいはずです。
もしマネージャがそういった考えに至らずに、成果とは全く関係のない軸で、勤務時間だからさぼったらダメいう考えをしているのであれば意味不明です。
3つ目のプロジェクトマネージが暇で不安というのは、プロジェクトマネージャのメインの仕事は計画を策定することです。計画策定が完璧にできれば仕事の8割は終わったと言えるのではないでしょうか。
ですのできちんとした計画が策定されており、実行も順調なのであれば、プロジェクトマネージャは暇なものなのです。むしろ暇なのであれば、自分のプロジェクト遂行能力を褒めるべきです。
4つ目の管理している気がしない、承認欲求を満たせないというのは人として最悪です。仕事を自分の欲求を満たすための場所と勘違いしています。その様な人には早々に退場していただきたいものです。
ワークライフバランスはマネジメント不備の会社からITエンジニアを守るために必要?損失をクライアントに転嫁しているだけではないか。
もしワークライフバランスの推奨がマネジメント不備の会社からITエンジニアを守るために必要であるというならその意味は理解できます。
マネジメント不備の会社は計画性がなく、長時間労働でプロジェクトを完遂しようとします。筆者も昔は勤務時間が月300時間を超えるという事もありました。そのようなブラックな職場からITエンジニアを守りたいという気持ちは理解できます。
ですがその分の損失はいったい誰にいくのでしょうか。
たとえば会社が計画性がなく、本来の価格より安い価格で案件を受注したとします。そのため当然ながら正常な労働時間ではプロジェクトを完遂できません。昔であれば長時間労働で解決していましたが、昨今ではそれもできません。
そうなるとプロジェクト納期を延長するしかありませんが、クライアントとしては通常それは受け入れられません。なぜならSIerの残業させられないという理由で、クライアントが被害を被るのは意味がわからないからです。
クライアントからしたらなんとしてでも期限通りに完成させろとなります。契約ですから当然です。
こうなると詰みです。SIerとしては長時間労働を解禁するしかありません。
ですのでワークライフバランス云々と声を大にしていうよりも、SIerのプロジェクトマネジメントを改善するしか方法がないのです。そうして初めてワークライフバランスが達成されると考えます。