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プロジェクト計画が曖昧な国内大手SIerのPM(プロジェクトマネージャ)の与える影響。プロジェクトに関わる企業や人が全員不幸になる話。

筆者は現在、国内大手SIerの開発プロジェクトにクライアント側のPMOとして参画しております。

その国内大手SIerのPM(プロジェクトマネージャ)は、詳細なプロジェクト計画を策定することなく、すべてを曖昧かつ適当に進めようとします。

そのためプロジェクトに関わる企業(クライアント企業は当然の事、SIer自身も)や人(クライアント企業の担当者やSIerの開発者)が全員不幸になっているように思えます。

本記事では、PMが曖昧かつ適当にプロジェクトを進めることによる弊害を記載します。

PMの曖昧な進め方による具体的な事象とその弊害

ここではSIerのPMが曖昧かつ適当にプロジェクトを進めることにより生じた具体的な事象とその弊害を3つ記載します。

ユーザ企業に明確にタスクを依頼しない

プロジェクトを進めるために必要なとあるタスクについて、SIerとユーザ企業の役割分担が曖昧だったため、明確にしてほしいとSIerに依頼しました。

それを受けてSIerは実施すべきタスクの内容は説明はしてくれましたが、いつまで経っても役割分担は明確にしてくれません。

痺れを切らしたユーザ企業が「全部SIerさんが実施してくれるんですか?」と確認すると、SIerは「裏でデータパッチが必要な場合は我々(SIer)で対応します」と微妙に噛み合っていない返答をするのです。

SIerが言いたかったことを解釈すると「本来は全部ユーザ企業側で実施すべきタスクですが、裏でデータパッチが必要な場合は我々(SIer)で実施します」という事が言いたかったみたいです。

ですが、そのSIerは「本来は全部ユーザ企業側で実施すべき作業ですが、」の前半部分が非常に言いづらかったようで、話がかみ合うのに非常に時間がかかりました。

SIerが言いずらかった理由としては、その話がプロジェクト終盤で初めて出てきたからで、ユーザ企業から「今更言われても困る」と叱責を受けることが想定されたからでしょう。

実際にユーザ企業としては、当初予定していなかった担当者を急遽アサインする必要があり、非常な迷惑を被りました。

このSIerは子供と同じです。失敗をして本当の事を言わないといけないことはわかっているのだけど、怒られることが怖くてビクビクしています。

ですが、結局いつかは伝えないといけないのであれば、曖昧な言い方をして先延ばしにするよりも、さっさと明確に伝えた方がプロジェクトのためになります。

要はこのSIerのPMはプロジェクトの成否よりも、自分が怒られるのではないかという個人の感情を優先しており、仕事に対するプロ意識が欠如しているのです。

そもそもSIerがこの話をプロジェクト初期の段階から伝えておけば、ユーザ企業も事前に担当者をアサインすることが出来たので、スムーズなプロジェクト進行が可能だったでしょう。

結局はSIerの計画策定能力の欠如(プロジェクトマネジメント力の欠如)に起因しているのです。

スケジュールが遅延したのにリスケ後の完了期日を明言しない

SIerの開発が当初の計画より遅延しました。結合テストで当初の想定より不具合が発生して、修正に時間がかかっているとのことです。開発プロジェクトとしてはよくあることです。

ユーザ企業としては(遅延した事実はしょうがないとして)当然リスケ後のスケジュールの提示を求めます。その後の本番リリース時期にも影響がでるので、明確にしてくれないと困ります。

ですがそのSIerは、いつまでたってもリスケ後のスケジュールを明確にしてくれないのです。

そして何度も催促した挙句、やっと出てきたスケジュールは、リスケしても明らかに不可能な期限を提示してきて、何としても(開発者に)やらせますと精神論に走る始末です。(そんなPMのもとで働く開発者の人たちは可哀想すぎます。)

挙句の果てに、ユーザ企業が「では確実にその期日でできるんですよね?」と確認すると、「確実とは言い切れませんが努力します。」と支離滅裂なことを言う始末です。

ユーザ企業側としては、プレッシャーをかけているつもりは毛頭なく、時間がかかっても確実に品質が担保できるリスケ後のスケジュールを提示してほしいとお願いしているのですが、SIerのPMが一人で勝手に早くやらないとと思い込んでいるのか、もしくはその計画を立てる能力がないのか、こちらの意図が一向に伝わりません。

これもSIerの計画策定能力の欠如(プロジェクトマネジメント力の欠如)に起因しています。当初の計画は既に遅延しており、更にリスケ後の計画策定もできていないという状況で、もはやこのSIerを信じることはできません。

ユーザに依頼するタスクの期限を明確にしない

SIerからユーザ企業が設計書レビューのタスクを依頼されましたが、その期限をできるだけ早くと提示してきました。

この期限の提示の仕方はあり得ません。

できるだけ早くと言われると捉え方は人それぞれ異なります。当日中と捉える人も居れば、1週間以内と捉える人、1カ月以内と捉える人といます。

仮にタスクを依頼された人が1カ月以内と捉えた場合に、SIerはそれで困らないのか?ということです。

本来であれば、SIer側のシステム開発のスケジュールに則って、そのタスクが完了していないとプロジェクトが遅延してしまう期日を明確に提示すべきです。

そのためユーザ企業からSIerに対して、期日を明確にしてくださいと依頼しましたが、結局は最後まで明確にしてくれませんでした。

その理由は、SIerの計画が雑で、いつまでにそのタスクが完了していないとプロジェクトが遅延してしまう。という事がSIer側でもわからないのです。

要はすべてを曖昧に適当にプロジェクトを進めているのです。これだと遅延するのも当然です。プロジェクトマネジメントなんて無いようなものです。

PMの力不足が原因で関係者全員が不幸になる

上記の3つは、全てプロジェクトマネージャ(PM)の力不足、具体的には計画策定能力の欠如に起因しています。

この様なPMが仕切るプロジェクトの場合、ユーザ企業もSIerも全員不幸になります。

ユーザ企業の視点からすると以下の迷惑を被ります。

  • 当初想定していなかった担当者のアサインにより追加のコストが発生
  • 本番リリースが遅延した分の追加のコスト(旧システムも保守料やプロジェクト関係者の継続アサインなど)が発生
  • 本番リリースが遅延した分のシステム導入効果が得られない

当然SIerも迷惑を被ります。

  • 遅延によるコスト増(開発者の維持費や残業代)、目標利益率を下回る
  • 開発者が疲弊する(過度な残業や休日出勤)、最悪SIerからの離職
  • 顧客の信頼を失う、将来のビジネスチャンスの喪失

PMの仕事のほとんどは計画策定につきます。計画策定が上手くいけば上記のことはすべてうまくいきます。

実行フェーズにおける進捗管理やトラブル対応などは二の次でしかありません。何かトラブルが発生したらその時考えればいいという先延ばしの考えは、関係者全員に迷惑が掛かります。

トラブルを精神論で乗り越えようとするプロジェクト管理はもってのほかです。

結局トラブルが発生した場合に対処するのは、SIerの開発者やユーザ企業の担当者など、PM以外の人たちなのですから。

PMの仕事は大袈裟でもなんでもなく、自社や顧客の利益、および、プロジェクト関係者全員の人生を背負っているということをもっと自覚すべきかと思います。