本記事では、経験の浅いITエンジニアがフリーランスとして独立することの懸念点を記載します。
世の中では(正社員での経験を積まずに)最初からフリーランスのITエンジニアとして活動することを進める風潮も見受けられますが、実際にフリーランスとして活動して3年目の筆者としては、いかがなものかと思うところもあります。
漫然とフリーランスを続けていてもいつか仕事は無くなる
最初に結論を書きますが、経験の浅いITエンジニアがフリーランスとして独立した場合、最初の数年間は、正社員として就職した同年代の人以上の収入を得られるかもしれませんが、そのまま漫然と活動していても長続きはしません。
40歳以降で仕事が無くなる、もしくは、仕事があったとしても選択肢の幅が大きく狭まり、正社員以上に不自由な状況に置かれることが容易に想像されます。
※その根拠は、実際に筆者のところにエージェントから紹介される案件のうち、40歳まで(よくて50歳まで)という条件が付与されている案件が8割くらいを締めているからです。しかもITエンジニアとしての求人はほとんどなく、PMやPMOなどマネジメント関連の業務がほとんどです。
そうならなためには、将来に備えて準備をしっかりとしておくことが重要です。
将来困らないための準備の仕方
準備の仕方としては、次の2つの方法があると考えております。
- 最初は正社員として経験を積み、管理職以上を経験したうえで独立する
- 最初からフリーランスとして活動する場合、仕事以外の時間を多めに確保したうえで、将来生活できる術を見つける
前者については、フリーランスとして40歳以上で仕事を獲得するためには、発注者側のPM/PLなどリーダーや管理職クラスの方々への直接的な働きかけが重要となり、それらの方々をサポートしていくような立ち位置で仕事をする必要があります。
その様な仕事を獲得するためには、相手側が求めていること、困っていることなどを理解している必要がありますが、そのためには、自身が正社員でPMや管理職としての経験を積んでいることが一番です。
ですので筆者としては、本当は正社員として管理職の経験を積んだうえで、フリーランスとして独立することをお薦めしております。ですが、出世したりマネジメントしたりが嫌だからフリーランスとして独立したい、という人も多々いらっしゃるかと思います。
そのための考え方が後者にあたります。
フリーランスの最大のメリットは、自分の時間を確保しやすいことにあると筆者は考えております。ですので、フリーランスのITエンジニアとして低稼働(週3日など)で必要最低限の収入を確保しつつ、残った自由な時間を使って、将来へ向けての準備をするのがよいのではないでしょうか。たとえば、
- 何かしらの事業を考える、
- 他の業種の仕事を並行で試してみる
- 支出を下げて生活する方法を試みる
- 田舎暮らしを試みる
- 趣味に全力投球してみる
など、敢えて普段の仕事とは違う事に多くの時間を使う事により、将来のプランを考えていくことが大事だと思います。
繰り返しになりますが、一番良くないのは、漫然とフリーランスとして正社員と同じタイムテーブル(平日5日、1日8時間勤務)で仕事をしてしまう事だと考えています。
その他のフリーランスの負の側面
その他、経験の浅い状態でフリーランスのITエンジニアとして活動する際の、負の側面をいくつか挙げてみたいと思います。
正社員より労働環境が悪い
経験の浅いフリーランスは何でも屋として扱われがちです。正社員の方が手が回らない、雑務で/細々していて/面倒な作業など、スキルアップに繋がらず、やりがいのない仕事を多く振られがちです。
労働時間についても、プロジェクトの状況によっては多大な残業を要求されます。私の同業者の方でも、長時間労働を強要されて、体調を崩す人を何人か見てきました。
※この点については、上記にも記載しています通り、最初から低稼働の案件に参画することをお薦めします。稼働率100%の案件に参画して、倒れるまで使い倒されるというのが最悪のパターンです。
仮に業務上の問題が発生した際に、正社員であれば、人事に相談したり、プロジェクトを変えてもらったり、(最終手段として)傷病手当をもらいながら休職するなど、対応策はいくつかありますが、フリーランスは誰にも相談できません。
フリーランスの解決策として、嫌な案件であれば、契約終了にすればいいという考え方もありますが、あまりそれを繰り返していると、案件の選択肢が減ってきてしまい、結果、収入のために嫌な案件にしがみつかざる得なくなり、正社員より不自由な立場に置かれるということも考えられます。
また案件を紹介してくれるエージェントは、そういったプロジェクト管理上の問題については、まずもって役に立ちません(愚痴や話くらいは聞いてくれるかもしれませんが)。エージェントの多くの方はITの現場の仕事には精通しておらず、顧客のPMやPLと交渉して、こちらに有利な結果を引き出すという事はできない人がほとんどです。
成長できない
上記にも記載しましたが、経験の浅いフリーランスは何でも屋として扱われがちです。正社員の方が手が回らない、雑務で/細々していて/面倒な作業など、スキルアップに繋がらず、やりがいのない仕事を多く振られがちです。
なので自分の能力以上の仕事にチャレンジすることができず、成長できません。短期的に見れば問題ないかもしれません。(正社員の同年代の若手と比較しても収入は多いと思います)
ですが、長期的にみると、正社員として苦しみながらも上位のポジションにチャレンジしてきた人と、粛々とできるタスクを繰り返してきたフリーランスとではスキルに差がつくのは当然の事かと思います。
ここでいうスキルとは技術的なスキルの事ではなく、PMやPLやチームリーダーなどマネジメント的なスキルの事です。
言語などの技術的なスキルは書籍や研修などで個人で学ぶことは可能でしょう。ですがマネジメント的なスキルは書籍や研修のみで学ぶことは不可能です。何よりも実地での経験や感覚が重要になります。
結局は正社員でも同じではないか?
ここまでフリーランスの負の側面を述べてきましたが、これらのことは、正社員でも同じではないか?と思われた方もいるかと思います。そして筆者もまさしくその通りだと思います。
正社員であっても、会社が定年まで面倒を見てくれる保証はありません。いつどの大企業が潰れたり、リストラするかは全く予測ができません。
そして、漫然と正社員として数十年勤めてきた人が急に職を失う状況になった場合は、フリーランスより悪い状況に追い込まれる可能性もあります。
そう考えると、結局は正社員とかフリーランスとかの働き方よりも、個人の意思(どうやって生きていくか、そのために何をすべきか)が何よりも大事になってくるように思われます。